ガソリン
ガソリンの種類
ガソリンエンジンの燃料であるガソリンは原油を蒸留・分解した際に得られる石油製品で、ハイオクとレギュラーの2種類があります。ハイオクとは、ハイオクタンガソリン(high-octane gasoline)の略称であり、オクタン価が高いガソリンを意味します。
オクタン価とは数字が大きいほどノッキング現象を起こさない=ガソリンエンジンの圧縮行程で高圧になった時に自然発火(異常発火)しにくい性質の程度をあらわす数字で、JIS規格では96オクタン以上のガソリンをハイオクタンガソリン、96オクタン未満89オクタン以上のガソリンをレギュラーガソリンと区別します。
ガソリンエンジンは、ガソリンを吸入、圧縮、爆発、排気というサイクルを繰り返してピストン運動(シリンダー内部をピストンが上下に往復運動)をしており、ガソリンは圧縮行程の終わりに点火して爆発することで押し上がったピストンを押し下げるために必要なエネルギーです。もし、ガソリンが自然発火(異常燃焼)してしまうと、ピストンを押し上げている途中、つまりピストンがまだ上がりきっていないうちに爆発を起こしてピストンを押し下げてしいまいエンジンを逆に回転させるように爆発力が働くため、エンジン効率が極端に落ちてしまいます。この現象をノッキング現象と言います。
そのため、ハイオクタンガソリンは、ガソリンエンジン性能を安定して効率良く爆発させられるガソリンであることから、別名をプレミアムガソリンとも呼ばれており、エンジンの性能が重要なスポーツカーなどに主に用いられます。
ガソリンと軽油との違い
軽油も同じく原油を蒸留・分解した際に得られる石油製品です。原油は沸点(沸騰して蒸気になる温度)によってまず5種類の成分に分けられます。製油所では、原油を加熱炉で熱して、蒸気にして沸点温度によってそれぞれの成分が蒸留装置によって分けられていきます。沸点のもっとも低い30℃以下の蒸気はLPガス、次いで約30℃~180℃の蒸気はナフサ、約150℃~250℃の蒸気は灯油、約250℃~350℃の蒸気は軽油、残油がそのまま重油として留分されます。このうち、ガソリンはナフサ留分にあり、後にガソリンにも分解されることから粗製ガソリンとも呼ばれます。
ナフサ留分のうち、沸点が30℃〜80℃ものを軽質ナフサといい主にプラスチックの原料となる石油化学製品に、沸点が80℃〜180℃ものを重質ナフサといい主にガソリンおよび芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン)になります。
重質ナフサは、50オクタン前後とオクタン価が低く、そのままガソリンエンジンの燃料として使用するとノッキング現象を頻発してエンジン効率が悪いので、オクタン価を高めるために接触改質装置で分子構造を改良されたのちに品質により自動車ガソリン、航空ガソリン、工業ガソリンに分けられます。
また、軽油とガソリンでは引火点と着火点にも違いがあります。引火点は、火元を近づけた場合に燃え始める温度。着火点は、火元がないところでも自然に燃え始める温度のことです。ガソリンの引火点はマイナス40℃以下、着火点は300℃と極めて引火しやすい燃料です。対して、軽油の引火点は50℃~70℃、着火点は250℃で、ガソリンと比べて引火しにくい燃料である特徴をもちます。
軽油はディーゼルエンジンに用いられる燃料であることからディーゼル燃料とも呼ばれ、ガソリンエンジンでは自然発火してしまうと異常燃焼としてエンジン効率を落としてしまう現象でしたが、逆にディーゼルエンジンでは軽油の引火しにくさを利用して自然発火によってエンジンをピストン運動させます。圧縮して自然着火するまで温度を上げて爆発させることでピストンを押し下げます。軽油を利用するディーゼルエンジンは高出力で熱効率が良いですが、騒音・振動が大きく、小型化することも難しいため、トラックやバスなどの大型車に主に用いられています。また、ディーゼルエンジンは大気汚染物質の排出量が多いことが問題視されていましたが、2009年にはクリーンディーゼルエンジンと呼ばれる大気汚染物質も二酸化炭素の排出も抑制する環境面に配慮したエンジンが開発されています。
ガソリンスタンドでは、消防法で定められているルールに基づいてハイオクタンガソリンのノズルには黄色、レギュラーガソリンのノズルには赤色、軽油のノズルには緑色が使われています。